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執筆者の写真Mariko Watanabe

山陰中央新報コラム「羅針盤」第2回



山陰の地元紙「山陰中央新報」の日曜1面のコラム「羅針盤」の執筆を、タルマーリー渡邉格が担当しております!藤原辰史さん、内山節さん、片山善博さんなど、8名の著名人で順番に執筆、2カ月に1回くらい登場します。


第2回2021年12月12日(日)掲載のコラムを、以下に転記します♪

(第1回はこちら


そして第3回目は2022年2月13日(日)に掲載されますので、「山陰中央新報」購読者の皆さん、ぜひ紙面をチェックしてくださいね。


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2021年12月12日掲載


<羅針盤> やりたいことをやる 楽しい経験土台に成長

タルマーリー・オーナーシェフ 渡邉格


 昔ながらの知恵や技を掘り起こしてパンとビールを作っている私と妻の意識は、我が家の暮らしや子どもにも影響している。

 娘は16歳、息子は12歳になり、それぞれに忙しいが、それでもわが家はほぼ毎日、家族全員で夕食を共にする。

食事どきはいつもにぎやかで、例えばある夜の食卓ではこんな会話。

娘 「UFOって知ってる?」

妻 「え?宇宙の…」

娘 「いや、今日学校で聞いたんだけど、そういう焼きそばがあるの?」

息子「姉ちゃん、そんなことも知らないの?!」

娘 「ああ、ペヤングみたいなやつ?」

息子「ペヤングってなに?」

 うちにはテレビがないから、コマーシャル(CM)の情報が入ってこない。つまり子どもたちは、自ら興味を持った情報だけを取り入れている。逆に私はCMの情報を常識と捉えていることに気付かされ、ハッとする。

 ところで食に関して、仕事だけでなく家庭でも、なるべく良い素材を使って手作りを心掛けてきた。例えばギョーザ作りは、小麦粉で皮を作るところから、幼い子どもたちと一緒に手を動かした。

娘が小学生の頃、学校行事の買い出しでスーパーに行った彼女が、帰ってくるなり驚いた様子で言う。

「ねえ知ってた?!スーパーに“ギョーザの皮”っていうのが売ってるんだよ!」

 彼らはギョーザの皮だけでなく、マヨネーズもパン粉も「お店で買うもの」というより先に、「自分で作るもの」と認識した。そのおかげか、彼らはいつの間にか料理上手になった。「作って食べる」という、暮らしを豊かにする最大の技術を身につけた彼らは今、さらにその先に生きる喜びを求めていくようにみえる。

 3年前から娘はK-POPアイドルのファンになり、自発的に韓国語を勉強し始めた。今では韓国の友人と会話を楽しんだり、映画を原語で観たりしている。

彼女は物事をよく観察し、新たな発見に素直に驚いたり喜んだりしながら、興味のあることをするすると記憶していく。そんな様子を見ていると、「やりたいときにやりたいことをやる」ことが何よりも人を成長させるのだと気づく。

 一方で私の人生を振り返ると、「こうあるべき」という常識にとらわれて、どれほどやりたいことを我慢してきたことか。その後悔とコンプレックスを乗り越えるために、30~40代を費やしたように思う。

 設定されたゴールに向かって競争しながら勉強するより、楽しい経験を土台に学べば、子どもたちはまっすぐに伸びていく。誰もが「やりたいときにやりたいことをやる」ことができれば、この世界はより多様で豊かになるだろう。


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