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山陰中央新報コラム「羅針盤」第19回

執筆者の写真: Mariko WatanabeMariko Watanabe

 こんにちは、女将の麻里子です。


さて、地元紙「山陰中央新報」の日曜一面のコラム「羅針盤」の執筆を、タルマーリー渡邉格が担当しております!藤原辰史さん、内山節さんら著名人が順番に執筆、2カ月に1回くらい登場します。


第19回2025年3月9日掲載のコラムを、以下に転記します。


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 昨年末から3月上旬までタルマーリーは長い「冬休み」だったが、実際はものすごく忙しい日々だ。前回も書いたが、今年は大きく事業を転換するからだ。そのために拠点をこれまでの山間部から移し、町の中心部に集約する。


 しかし簡単ではない。家庭の引っ越しと違い、大量の大型機械を移動させなければならない。高さ6メートルの製粉機をはじめ、プレハブ冷蔵庫4台、ビールタンク4基、珈琲(コーヒー)焙煎機…。引っ越しを移転先の改装と同時進行している最中で、ひどい筋肉痛だ。


 今までは一つの大きな物件で収まっていたが、町中では空き家4軒に分散することになった。しかし、カフェ&ホテル▽パン工房▽ビール工房▽ギャラリー が徒歩1分以内にぎゅっと詰まって立地している。これらをまとめて「智頭タルマーリー発酵研究所」と名付けることにした。


 17年前に「小さくても本当のこと」がしたいと思って始めた事業だが、いつの間にかこんな大所帯になっていた。しかし「本当のこと」をするためには地域で取れる「本物」の農産物を使うから、保管、加工するための機械が多く必要だったのだ。


 農産加工をしてみると、一つ一つの素材は多くの人々による努力の結晶だと気付く。すると敬意が生まれ、自然の流れに沿う素材を見分けられるようになる。そうして丁寧に加工すると、品質が向上する。


 しかしそれを価格に転嫁すると、大きな市場では競争に敗れてしまう。だから一般的には生産性向上のために分業が進む。誰が作ったか分からない世界各地の原材料を使い、低価格路線に走り、結局、食の業界では労働に見合わない低い賃金となってしまう。特に農業は手間の割に価格が低く、後継者も新規就農者も非常に少ないのが現状だ。


 経済学者の鈴木宣弘氏によると、日本の食料自給率はカロリーベースで約37%といわれているが、ほとんどを外国産に頼る種や化学肥料も考慮して試算すると、実質は9・2%だという。今後、戦争や災害などで世界の物流が止まると、日本人の6割が餓死するという報告もあるそうだ。昨今の物価上昇は厳しいが、日本の農業崩壊を止めるためにも、国産の農産物をしっかり買い支えていく必要がある。


 私は常々、生命の根幹に関わる「食」が作られる工程を可視化したいと思っていた。体験が一番だが、目で見るだけでも、何かを「生み出す」身体感覚を取り戻す一助になるだろう。そこで「智頭タルマーリー発酵研究所」は、作る工程が見えるように設計している。


 私が夢見る町の活性化はこうだ。私たちが「モノづくり」の現場を見せることで、さらに他の職人も集まってくる。すると町の人々は、暮らしに関わるモノの質を一つ一つ高めていくことができ、どんどん暮らしやすく、幸せになっていく。皆さんにもぜひ、その変遷を見守ってほしい。麦を製粉してパンとビールをつくり、野菜や畜産物からピザや料理を作り、珈琲も焙煎(ばいせん)し、私たちが日々感じている「幸せ」を人々と共有していこうと思っている。



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