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執筆者の写真Mariko Watanabe

一時休業と移転への経緯


いつもタルマーリーを応援していただき、誠にありがとうございます。2014年11月から一時休業に入り、皆様にはご心配をおかけして申し訳ありません。 早速ながら、今後の展望をお知らせいたします。タルマーリーは鳥取県智頭町へ移転し、【パン・ビール・カフェ】の3本を事業の軸に、2015年夏までに再開する予定です。 大変遅くなりましたが、その経緯を下記の通りご説明いたします。

▼タルマーリーの集大成に向けて これまで私たちがパンづくりにおいて目指してきた目標は、 「地域の天然菌×天然水×自然栽培原料」 すなわち、 「今、ここで、タルマーリーにしかつくれないパン」 をつくることです。 また「地域の農産加工センター」を目指し、パンのみでなく近隣で採れる農産物を活かした加工品を作りたいと考えてきました。そして、ビールが大好きな渡邉格(以下、イタル)は5年くらい前から地ビールの製造を夢見てきました。 ビールは古代メソポタミアより「液体のパン」と呼ばれてきたように、パンとビールはともに麦を発酵させた食物であり、製法や技術の応用も可能です。

そこで、これまでパンで積み上げてきた技術を活かしたビール製造を実現するため、鳥取県智頭町への移転を決めました。 これまでと同じように、

「地域の天然菌×天然水×自然栽培原料」

すなわち、 「今ここで、タルマーリーにしかつくれないパンとビール」 をつくることが、新たな目標となります。 また、原材料のみならず、エネルギーとして薪を利用し石釜でパンやピザを焼くなど、智頭の里山の恵みを最大限に活かした加工と、それを楽しむ場をつくること。 それが、タルマーリーの理念の集大成と考えています。

▼ロール製粉機の導入と失敗 「地域の天然菌×天然水×自然栽培原料」でパンを作るという目標を達成するために、2011年に千葉から勝山に移転し、天然菌と天然水は確保できました。しかし、「地域の自然栽培原料」を100%にもっていくのが最後の難関でした。 これまで、パンに使う小麦使用量の約20%を占める全粒粉は、「地域の自然栽培原料」を石臼製粉機で自家製粉してきました。一方で、約80%を占める白い小麦粉は、九州の大手製粉会社から仕入れていました。この白い小麦粉も「地域の自然栽培原料」に切り替えるためには、「ロール製粉機」という大がかりな機械の導入が必要でした。 これを達成するため、まずは近隣の農家に無肥料・無農薬での小麦栽培を依頼。更に、高さが6メートルもあるロール製粉機を設置できる物件を勝山周辺で探したもののなかなか見つかりませんでした。

やむを得ず、勝山の店舗の天井に合わせて機械の高さを低くする設計を模索しました。そうしてやっと2013年12月にロール製粉機を導入し稼働を始めたものの、設計上の不具合で故障。やはり本来の高さ6メートルのままで設置しなければ稼働できないと判断し、再び近隣で物件探しを始めました。

▼地ビールの事業化 初めてビールづくりに興味を持ったのは、イタルが2003年に修業していたパン屋で、ビール酵母のパンに出会ったときです。自分もビール酵母のパンをつくってみたいと思った上に、2008年に千葉で開業した後は「いつか地ビールの製造までやってみたい」と考え始めました。しかし実際に着手できたのは勝山に移転して1年後の2013年。ビール酵母のパンを製品化していくと同時に、本格的な地ビール製造を目指し、研究や物件探しを始めました。

▼経営の中心をパンからビールへ またイタルが40代に入り、パンづくりの体力的な厳しさを痛感していました。 パンは発酵が早いので、仕込んでから24時間以内に完成させなければなりません。早朝から長時間重労働のパン製造は体力的に厳しい上、特に2013年9月の書籍『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』(講談社)の刊行後は来店客数が増え、パンの製造量も増えたことに加え、取材や講演依頼も多く、心身の負担が大きくなっていました。 一方で、ビールは発酵がゆっくりで、仕込んでから完成まで数週間かかります。また、機械化できる工程も多く、パンと比べれば心身の負担が小さくなると予想されます。 これからタルマーリーとして商品の品質を落とさずに、イタルが老後まで職人として精神的にも肉体的にも持続可能な経営形態へと移行するために、地ビール事業の展開は今しかない。43歳という、まだ新規事業の立ち上げに必要な体力のある今の内に手を打っておかなければならないと判断しました。

▼休業への経緯 上記の通り、ロール製粉機の設置とビール製造を実現するためには、勝山の1店舗のみではスペースが足りないので、新たな物件を探し始めました。当初から、勝山のパン屋の営業を続けながら更にもうひとつ拠点を増やす、すなわち2拠点体制を考えていたので、なるべく近隣で物件を探したのですが、1年以上かけてもどうしても見つかりませんでした。やむを得ず、車で1~2時間の距離まで範囲を広げて探し始めると、候補となる物件が見つかってきました。 そこでいよいよビール事業化へ向けて動き出そうとしていた矢先、パン製造の主要スタッフが2014年10月末で退職することになりました。更に、イタルの持病である腰痛が悪化。この状態では、タルマーリーの命であるパンの品質を維持しながら2拠点体制を築いていくことは不可能でした。 勝山の皆様、真庭市をはじめこれまでご支援をいただいた皆様には大変申し訳ない思いでしたが、苦渋の末、10月末で勝山の店を閉め、新天地ですべての事業を一本化することを決断しました。 (なお、真庭市から受けた「真庭市起業支援事業補助金」及び「真庭市産業サポートセンター支援事業支援金」は、規定に基づき全額返還いたしました。)

▼新規体制に必要な物件の条件

1.ロール製粉機が設置できるよう、天井までの高さが6メートルある。 2.ロール製粉機の稼働に伴い、農家から小麦を年間一括で仕入れ管理できるよう、大型冷蔵庫が設置できる。 3.ビールが製造できるよう、タンク、大型冷蔵庫などが設置できる。 4.良質なパンとビールの発酵に必要な、良質な地下水が利用できる。 5.パンの製造・販売、カフェの営業に十分なスペースがある。 6.薪で調理できる石釜や薪ストーブの設置が可能である。 7.将来的に、宿泊業も営業可能である。

▼智頭町「旧那岐保育園」への移転 2014年10月初めに一時休業を発表してから、上記の条件を満たす物件を早急に探し、岡山県内で有力な候補が見つかりましたが、交渉がうまくいきませんでした。 その頃、鳥取県智頭町で農家を営む知人から、智頭への移転を勧められました。その後、智頭町役場からも打診があり、廃園後に利用されていなかった物件、旧那岐保育園を紹介してくださいました。この物件が諸条件に合致したため、移転を決意しました。

▼今後の展望 2014年12月21日に、智頭町長、いざなぎ振興協議会をはじめ町の方々と協定調印式を行い、旧那岐保育園の使用が正式に認められました。この度の移転に対して、智頭町からは多大なるご支援をいただき、また那岐地区の皆様からも大きな歓迎を受け、心から感謝しております。 移転後は、パン・ビール・カフェの3本を事業の軸に据えていく予定ですが、ビールの製造許可を得るまでに半年以上かかる模様です。よって、まずはパンとカフェからのスタートになりますが、2015年夏頃までには事業を再開したいと考えています。

以上が、これまでの経緯です。現在は、再開に向けて具体的な作業を進めているところです。今回もまた、イタルがスタッフと共に、できる限り自力で改装工事をする予定です。 イタルは、「いい意味で、今までの期待を裏切りたい。」と張り切っています。 さて、森に囲まれた豊かな里山、智頭町の旧那岐保育園が、どんな雰囲気のタルマーリーに変身するでしょうか…。 どうぞ今後とも応援をよろしくお願い致します。

◆智頭町について 豊かな自然と歴史を活かし、観光と移住者の受け入れに力を入れています。人口8,000人弱という機動力を活かし、「森のようちえん まるたんぼう」 を町がバックアップするなど、ユニークな政策を打ち出し、話題を呼んでいます。

◆智頭駅までのアクセス 京都から2時間半、大阪から2時間、神戸から1時間半(特急スーパーはくと) 岡山から1時間20分(特急スーパーいなば) 鳥取から30分(特急スーパーはくと/特急スーパーいなば)


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