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執筆者の写真Mariko Watanabe

山陰中央新報コラム「羅針盤」第12回



こんにちは、女将の麻里子です。


さて、地元紙「山陰中央新報」の日曜1面のコラム「羅針盤」の執筆を、タルマーリー渡邉格が担当しております!藤原辰史さん、内山節さんら著名人が順番に執筆、2カ月に1回くらい登場します。


 第12回2023年10月掲載のコラムを、以下に転記します♪


 次回は12月31日(日)掲載予定です。「山陰中央新報」購読者の皆さん、ぜひ紙面をチェックしてください♪

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2023年10月掲載

羅針盤 身体に向き合い「待つ」

タルマーリー・オーナーシェフ 渡邉 格


 前回、糖尿病で入院したいきさつを書いた。この病と付き合う中で、さまざまな変化がある。まずは小さなことだが、齢(よわい)52にして初めて、水中でも目を開けられるようになった。


 私はもともと気が小さくて極端に怖がりだ。体調不良の原因が糖尿病かもしれないと分かっていながら病院に行けなかったのは、注射が怖かったから。こんな性格だから、合併症を調べるために眼科を受診した時に痛い思いをし、退院後は眼科に行かなかった。入院中の診察では「網膜症にはなっていない」とのことだったので、まあ大丈夫…と思いたかった。


 しかし相変わらず目は不調で、不安で仕方ない。右目はぼやけていて、さらに瞳孔から入る光の調整ができず、まぶしさで目が痛い。明るい場所から暗い場所に行くと、しばらく視力が回復しない。


 目の中に違和感があるので、とりあえず毎日シャワーの時に目を洗ってみることにした。それで、これまで怖くてできなかったけれど、シャワーの水にも目を開けられるようになったというわけだ。


 とにかく、自分が信用できる人にだけ心身を診てもらいたい…。そんな私の性格を熟知している妻から、

「眼鏡屋さんに相談してみたら?」と助言をもらう。

 「倉吉によい眼鏡屋さんがあるよ」という友人の紹介で、3年前に初めてそのお店に行った。大手の眼鏡店で作った当時の眼鏡では夜の運転時に見えづらかったので、新しい眼鏡を作りたかった。当然、もっと度数の強いレンズになると予想していた。


 だが倉吉のお店では「今の眼鏡の度が強すぎます」と言われて驚いた。その論理はこうだ。目は遠近を見る時の変化で筋肉を多用する。あまり度数の強い眼鏡をかけると、その変化の時に目に緊張をつくり、身体まで緊張させる。


 だから筋肉を休ませるために、パソコンなど近くを見る時に使う度数の弱い眼鏡と、運転などで使うやや度数の強い眼鏡と、二つ作ることを勧められた。実際にそれらを使うようになって、ずっと悩んでいた目の疲れはだいぶ良くなった。


 今回は、具合が悪い右目の視力はだいぶ悪くなっているだろうと覚悟して、倉吉を訪れた。しかし検査結果はなんと、両目とも視力が上がっていた!


 しかも、もともと悪かった左目がかなり良くなり、左右の視力が逆転したことでバランスが悪くなっていたようだ。


 「視力の向上と病気の影響で、光に敏感になっているのでしょう。恐らく目は回復傾向にあるので、そのまま様子を見ましょう」とのことだった。


 なんともうれしくて妻に報告すると、「昨日まで『失明するかもしれない』とかおびえていたくせに、今日は『視力が上がった』って小躍りして、どういうことなの」とあきれていた。


 妻の言う通り「病は気から」かもしれないが、それから目は良くなっているように思う。じっくり身体に向き合い、「待つ」ということ。不安にかられて暴走するイノシシ年の私を、妻と病気が必死に留めてくれていることに気付く、齢(弱い?)52の秋である。

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